「みんなでつくるバリアフリー」(光野有次)

バリアフリーについて勉強しましょう

「みんなでつくるバリアフリー」
(光野有次)岩波ジュニア新書

「バリアフリー」。
今でこそ聞き慣れた言葉ですが、
私たちの国において、その考え方は
どれだけ定着しているのでしょうか。
「バリアフリー?
ああ、段差をなくすことでしょ」
程度にしか考えていない人も
多いのではないかと思います。

私自身、若い時分には
まったく理解できていませんでした。
20数年前、私の勤務する地域で、
「肢体不自由の生徒が入学する小学校に
2000万円の予算を投じて
エレベーターを設置する」ということが
ありました。
私をはじめ、周囲の学校職員は、
「たった一人の生徒のために、
どうしてそのような
大金をつぎ込むのか」
「養護学校もあるのに」と
憤慨していた記憶があります。
学校は設備予算に乏しく、
授業で使うラジカセ、ビデオデッキ、
ワープロ等を、教職員が自腹を切って
購入していた経緯もあり、
そのような予算があるなら
もっと一般の生徒に使うべき、という
考え方が根強かったのです。
今にして思えば恥ずかしいかぎりです。

さて、本書は単なるバリアフリーの
考え方の解説書ではありません。
筆者自らが動いて取り組んできた、
人権保障の実現への
活動記録といえます。
すくいやすい食器の開発に始まり、
障害者用の自動車の設計への提案、
バリアフリー団地実現への助言、
数々の障害者支援活動、…。
まさに「バリア」と戦う筆者の姿が
克明に記録されています。
筆者をはじめとする
多くの人たちの活動があって、
この20年、バリアフリーの考え方が
ここまで広まることが
できたのではないかと思います。

ぜひ、中学生に
本書を薦めたいと考えます。
中学生の段階から
バリアフリーの考え方を身に付け、
障害を持つ人も持たない人も、
強い者も弱い者も、
すべての人が支え合って
生活をすることを
当たり前と感じることができる。
それが理想だと思います。

ところで、私の長男もまた、
障害を担って生きています。
先天性の病気からくる
知的障害から始まったのですが、
ここ数年で身体機能も低下し、
車いすの生活を送っています。
長男が車いす生活になって
初めて気づきました。
自宅の廊下は狭く、
直進できるものの、
曲がることが出来ず、
生活に支障を来すのです。
日本の家は、
まだまだバリアだらけなのです。
とりあえずトイレだけはリフォームし、
トイレスペースで車いすを
動かせるくらいに広くしました。
私自身、バリアフリーについて
勉強している最中です。

(2020.5.7)

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

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